朝ドラ『あんぱん』、アンパンマンの作者・やなせたかしさんと、その妻・小松暢さんをモデルにしています。でも、実はドラマと史実ではけっこう違うところがあるんです。
もちろん、全部がフィクションというわけではありません。ドラマならではの演出もありつつ、リアルな出来事も取り入れられています。
この記事では、『あんぱん』と実際の二人の人生の違いと共通点について、解説していきますね。
『あんぱん』史実との違い

まず朝ドラ『あんぱん』のストーリーと史実で違う点をご紹介します。
ふたりの出会いは「幼なじみ」じゃなかった
ドラマでは、やなせたかしさん(劇中では「柳井嵩」)と、小松暢さん(劇中では「朝田のぶ」)が幼なじみ(小学校の同級生)として描かれています。
でも実際のふたりは、社会人になってから高知新聞社で出会ったのが本当なんです。
暢さんが入社したのは1946年、戦後初めて採用された女性記者のうちの一人。
そしてやなせさんが入社したのは、その3カ月後。
ふたりは「月刊高知」という文化総合雑誌の編集部で一緒に働きながら、距離を縮めていきました。
この「出会いの時期」がドラマと史実で大きく違うんですね。
のぶさんの生い立ちもかなり違う
ドラマの「のぶ」は、高知で生まれ育ち、地元の小学校の先生になりました。でも実際の暢さんは大阪出身です。
暢さんは女学校を卒業後、いったん東京に出て、高知出身の男性と結婚。ところが戦争で夫が召集され、暢さんは終戦を高知で迎えます。
夫は戻ってきたものの、まもなく病で亡くなり、その後に高知新聞社に入社したのです。
この辺りはドラマとけっこう違いますが、戦争によって人生が大きく動いたという点では、どちらも共通していますね。
のぶの幼少期の創作はなぜ?脚本家の意図
『あんぱん』の脚本を手がけた中園ミホさんは、インタビューで「やなせさんの幼少期や二人の青春期をどうしても描きたかった」と語っています。
やなせさんは戦争で弟を亡くし、その経験が後のアンパンマン創作に影響を与えたとされています。その精神や想いを丁寧に描くために、あえてオリジナルの幼なじみ設定を入れたそうです。
また「やなせさんは複雑な生い立ちで幼少期に寂しかったと思うので、元気な女の子がそばにいてくれたらいいな、と思った」という願望も、ふたりを幼なじみにした理由のひとつとなっています。
また、「のぶさんの幼少期は資料がほとんど残っていなかったので、近所に住んでいたらこんな感じかな? というイマジネーションを膨らませて創作した」とも語っていました。
『あんぱん』史実との共通点

次は朝ドラ『あんぱん』のストーリーと史実の共通点をご紹介します。
「試験前日に居眠り」は本当
ドラマの中で、柳井嵩は軍隊にいたころ、幹部候補生テストの前の日、馬小屋で居眠りしてしまいました。
それが原因で嵩はランクの低いほうの「乙種幹部候補生(乙幹)」にしかなれなかった…というシーンがありました。これは実話をもとにしています。
やなせさんは、本当は高ランクの「甲種幹部候補生(甲幹)」になれる成績だったそうですが、夜の不寝番中にうっかり眠ってしまい、不合格に。
でもそのおかげで前線ではなく内地に配属され、生き延びることができたというエピソードが、ご本人の自伝でも語られています。
「ハチキン」&「足が速い」も共通点

史実とドラマ、どちらにも共通しているのが、のぶさん(暢さん)の「強さ」や「行動力」。
暢さんのことを「ハチキン(高知の方言でおてんば)」だったとやなせさんが書いていたり、女学生時代には「韋駄天おのぶ」と呼ばれるほど足が速かったことも、実際のエピソードなんです。
ドラマでも、のぶさんが走るシーンがよく出てきますよね。
まとめ
『あんぱん』は、アンパンマンの作者・やなせたかしさん夫妻がモデルの物語ですが、完全な伝記ドラマではありません。
でも、史実に基づいた要素と、ドラマとしての創作がうまく合わさった、とても魅力的な作品となっています。
リアルな人生にはない「幼なじみ」という関係も、ふたりの絆や人生をより深く描くための手法だったんですね。
史実を知っていると、ドラマの見え方も変わってきます。これからの展開も楽しみにしながら、ふたりの本当の物語にもぜひ目を向けてみてくださいね。